インセクター・ソノ
約8000万年前に超大陸ゴンドワナから分裂し、その後すべての陸地が一度海に沈んだと言われているニュージーランドは、天敵となる哺乳類がほとんど存在しない鳥の楽園でした(NZ固有の哺乳類は二種類のコウモリだけと言われています)。キウィバードをはじめ、ユニークな生態・かわいらしいビジュアルの鳥たちが今も我々を癒し、楽しませてくれます。
鳥と同じく昆虫もNZのユニークなエコシステムを形成する重要な役割を担っていますが、鳥とは違って日常に溶け込むのはできるだけ遠慮いただきたい生き物です。四季折々、我が家の(というか同居人はあまり気にしていないので主に私の)虫とのデュエルを紹介します。
目次
夏はハエ
私が今の家に住み始めたのは南半球の真夏、1月のはじめからでした。オークランドの夏は日本のように蒸し暑くて不快という感じはなく、日差しは厳しいけど風が吹けば涼しささえ感じる過ごしやすい季節です。クーラーを使うことはなく、朝から晩まで家の窓を開放して涼をとるのが我が家の(そしておそらく一般的な)スタイルです。
網戸もないので当然虫は飛び回り放題で、とにかくハエがうっとうしかったです。キッチンで料理しているとすぐに食材にたかられて非常に厄介でした。毎日電撃殺虫ラケットを振り回していたので、涼しくなる頃にはかなりの上達を見せ、なかなかの捕獲率になった気がします。
秋はコオロギ
秋はコオロギ(cricket)がよく出ました。夜になると家のそこここから鳴き声が聞こえてきてドラマ鑑賞を妨害されることがしばしばありました。母親が泊まりに来たときも私がいない間にリビングに出たらしく、Red squirrelくんと二人で捕まえたのが良い思い出だと後日彼への手紙で書いていました。
ちなみにNZには「ウェタ」という翅が退化したコオロギのような見た目の虫がいて、希少な固有種として保護対象になっていたり丁重な扱いを受けています。大きい種は胴体だけで10cmを超えるという恐ろしい生き物です。興味のある方はぜひ画像検索してみてください。ロードオブザリングや攻殻機動隊が好きな方はWeta Workshop / Weta Digitalという会社の名前でご存じかもしれません。他にもよくお店や商品の名前・ロゴに採用されていたりもしますが、私にはちょっと理解ができない趣味です。。
冬はナメクジ
日本では梅雨のイメージがある?ナメクジ(slug)ですが、こちらでは冬に大量発生するようです。雨が降った日の夜に外に出てみると、一生懸命に家の壁を登っているナメクジの大群が気持ち悪かったです。おかげで infestation という単語を覚えました。家の中にもよく入ってきていて、サッとうまく捕獲しないと壁やガラスに嫌な汁が残るのが面倒でしたが、大概は朝になるとどこかにいなくなっているので慣れてきてからは割と放置気味でした。
春の楽しみ
我が家の玄関先に「ポフツカワ」という木が一本植わっています。春になると大きなふわふわした赤い花をたくさん咲かせ、年末ごろに見ごろを迎えることから「ニュージーランドのクリスマスツリー」とも呼ばれる固有種です。上等な蜜が採れることでも有名で、その蜂蜜であるポフツカワハニーはマヌカハニーに隠れたセンスの光るお土産だと思っています。
そんなポフツカワの木について、Red squirrelくんがある写真を見せてくれました(ハチや集合体が苦手な方はご注意ください)。
クリックして画像を表示
ミツバチには、巣に新しい女王バチが生まれると母親である元の女王バチが群れの半分を連れて新しい巣を作りに飛び立つ「分蜂」という習性があります。この写真は、私が引っ越してくる一ヶ月くらい前に、分蜂途中のミツバチの群れが我が家のポフツカワの木に立ち寄ったときのものです。私は、これまでの人生ベストワン小説「獣の奏者」の影響で、いつかは養蜂をしてみたいと思っているくらいミツバチに興味があります。今年の春にも同じようにやってきて、ぜひとも私にも分蜂ライブを観察させてくれることを期待しています。
その他小話
夜にシャワーを浴びているとバスルームに小さい蛾がたくさん入ってきます。実はニュージーランドは1800種類以上の蛾が生息するというグレート・モスな国でもあります。対して蝶は20~30種類しか確認されておらず、まさしくケタ違いの繁栄です。ニュージーランドの植物には白い花を持つものが多いという特徴がありますが、これは夜行性である蛾が月明かりに映える白い花に引き寄せられ、受粉を助けたことによる自然選択の結果だそうです。
さいごに、私はゴキブリだけはどうしても苦手で手も足も出ません。ニュージーランドにも広く分布していて苦労している人のツイートもよく見かけますが、ありがたいことに我が家ではほとんどエンカウントすることなくここまで生活できています。一度だけキッチンにカブトムシくらいデカいのが出たことがありましたが、幸い自室にいたときだったので、せっかくだから見に来いというRed squirrelくんからのお誘いを断固拒否して彼に処理してもらいました。ちなみにNZの害虫駆除グッズは実写のパッケージのものが主流で大変不愉快です(下図参照)。あまつさえシティではド派手なラッピングバスが走っていることもあって本当に勘弁してほしいです。