帰国が2週間後に迫った11月下旬、人生初のマイカーSuzuki Swiftを手放しました。相次ぐトラブル・出費に散々悩まされたビターなカーライフでしたが、事故なく乗り切って片付けも済んだ今となっては、実体験として車のことをたくさん勉強できてよかったなと晴れやかな気持ちがしています。そんな思い出を振り返りながら、どんな整備をしたのか・どうやって売却したのかを紹介します。

購入時の(希望にあふれた笑)記事もあわせてぜひご覧ください:2024-01-16 Be a driver

目次

入院を要した修理

クラッチ交換

買って乗り始めてすぐにクラッチを悪くして、ほぼ自走不可能な状態にまでしてしまいました。元からかなり擦り減っていたところに不慣れなクラッチ操作で最後のトドメを刺した感じだと思います。マニュアル車にとってクラッチは消耗品、ましてや嫌がらせのような坂道がたくさんあるオークランドではなおさらです。とはいえ、自分の運転技術の低さによる早々のトラブルにしっかり萎えました。

登り坂でアクセルを踏んでも加速しない・焦げたにおいがするなど典型的な症状でやるべきことは明らかだったのですが、初めての修理なのでお世話になる整備屋さん(メカニック)を見つけるところから始める必要がありました。家の近くの評価の良いところをGoogle Mapで探して、いくつかのお店に金額の見積もりと作業可能日を問い合わせました。

こうしてまとめると大して焦るような状況ではないような感じがしますが、当時は、始めたばかりのガイド仕事に出勤するための足がなくなった、NZ到着直後の出費+収入がないことで金銭的に不安だった、単純に車の整備やNZのメカニック事情に無知だった、という要因が重なってソワソワしていたことをよく覚えています。

返事がもらえた中で最短で作業してくれるところ(見積もり依頼から3日)でお願いをして、費用は$1,342(約12万円)でした。内訳は以下の通りです:

  • パーツ代 .. $465
  • 工賃 .. $652
  • 雑費(消耗品・送料など) .. $50
  • 消費税(GST) .. 上記合計に15%

取り外したクラッチ。切ったりつないだりする部分(おじさんの親指が乗っているリング)が摩耗しきっています。

ギアボックス修理

さて、クラッチ交換が終わってやっと安全・快適に楽しく運転できるぞウキウキして車を引き取りに向かったところ、カウンターで残念なお知らせがあると告げられました。ざっくり言うと「クラッチ交換して運転してみたらギアボックス(トランスミッション)がやかましいことに気が付いた。そっちも早く修理しないとヤバそう。」とのこと。1速と2速で、ヴィーンというノイズ音・急激なエンジン回転数の上昇(急発進)と低下(激しいエンジンブレーキ)の症状が出ていました。

買った当初から修理に出す直前までこういう症状には覚えがなく不信に思ったので、別のメカニックにも相談に行ってクイックに点検をしてもらました。結果、「クラッチ交換のあとオイルをきちんと補充せずに試運転して傷めたか、もともと傷んでたけどクラッチの問題に隠れて気づいていなかったか。まあ前者だったとしても証明はできないし、クレームを入れて補償してもらうのは無理だと思うよ。」とセカンドオピニオンをもらいました。

ギアボックスを直すとなると、

  • 状態の良い中古品を買ってきてごっそり交換するか
  • 分解して悪いところだけ部品交換するか

になるということでした。いずれにしても$2,000以上はかかるだろうと言われ、さすがに今パッとそんな金額は出せないぞと絶望しました。むしろこのまま売れるところだけでも売ってしまって別の車を買った方がいいのではとも考えて、いくつかの買い取り業者に問い合わせたりもしましたが、結局はだましだまし乗りながらどうするか考える慎重案に落ち着きました。「明日動かなくなるかもしれないし、当分大丈夫かもしれない。バラさないと中の状態が見えないので正直わからん。」と言われていたので、毎日スリリングな運転を強いられることになりました。

その後は、前半戦ハイライトの記事に書いたように、ガイド仕事で知り合った自動車整備に詳しい知人を頼って修理をしてもらいました。Kiwi的昔気質?というかなんというか、とにかく難しい人で、車が戻ってきたときに何をしていくらかかったのかを尋ねても「ベアリング変えといたから」としか教えてもらえず、修理の詳細は今も不明のままです。さすがに気が引けるのでお代は払わせてくれという申し出も軽くあしらわれてしまったので、ここは素直に親切に甘えさせてもらうことにしました。現金な話で情けないですが、縁に生かされていることを強く感じた体験で、自分も困っている人にいつでも手を差し伸べられる技術力と懐の深さを持って生きていきたいと思いました(できれば難しくない人でもありたいです)。

この頃が7月上旬、半年以上かかってようやく憂いなきカーライフの幕が開きました。ヤッタ♪

O2センサ交換

買ったときからオレンジ色に点灯していたエンジン警告灯を消すべく、O2センサというパーツを交換しました。時系列としてはクラッチを治してもらってすぐの2月はじめ、ギアボックスの件で相談に乗ってもらったセカンドオピニオンのメカニックにお願いしました。

O2センサはエンジンからの排気中の酸素濃度を測定するためのパーツで、そのデータをもとにECUがガソリンの噴射量を調整します。エンジンまわりのトラブルの中ではありがちな不具合のようで、ネットでもたくさん情報が見つかりました。


前のオーナーからもらっていた故障コード。P0031はエンジン直後のO2センサの異常。


費用は$381.8(約3万4千円)でした。

  • パーツ代 .. $144
  • 工賃(1時間) .. $125
  • 雑費(消耗品・送料など) .. $63
  • 消費税(GST) .. 上記合計に15%

うっとうしかった警告灯が消えて安心して運転できるようになったのと、燃費も14km/L→16km/L程度に向上して嬉しかったです。当時の私には小さくない出費だったけど、渋らずさっさと直す判断をして正解でした。

自分でできたメンテナンス

Red squirrelくんにヘルプをもらいながら、自分でも細々したメンテナンスをやってみました。近所に「Supercheap Auto」という車用品の大型チェーンの店舗があって、必要なものはすべてここで調達しました。ウェブサイトにナンバープレートの情報を入力すると適合する製品を教えてくれるのも便利でした。

バッテリー交換

AAでやってもらった検査でCCA値が低いというWarningが出ており、寒くなる前に手を打っておこうということでセールになるタイミングを見計らって交換しました。手伝ってくれと言ったら作業は全部Red squirrelくんがやってくれました。新しいバッテリーはたしか$190くらいだったと思います。

ワイパー交換

バッテリー交換のときに古いバッテリーを店舗に持って行くことで$20くらいのクレジットがもらえました。それを使ってリアワイパーのダメになっていたゴムを交換しました。

しばらくして、年に一回受けないといけないWoF(Warrant of Fitness、NZのプチ車検)の際に、今度はフロントのワイパーがきちんと機能していないよと指摘され、それが理由の一つで不合格をくらいました。


メカニックに工賃を払って直してもらうほどのものでもないので、こちらも自分で部品を買ってきて交換しました。ゴムと金属のレールが一緒になったものを所望の長さに切って使うのですが、腕が悪かったのかニッパーが悪かったのか、金属部分を切るのがとても大変で二人でああでもないこうでもないと言いながら作業したのが楽しい思い出です。

ヘッドライト磨き

WoFがFailした別の要因は”Headlight beam pattern poor”ということでした。果たして結果に関わるかわからないけど、自力でやれることは曇ったカバーを磨くぐらいだろうということで、家掃除用のクレンザーを使ってこすってみました。写真左がbefore、右がafterです。新車みたいに(ちょっと言いすぎ)きれいになって嬉しかったです。

WoFの再検査は無事合格しました。結局ヘッドライトの中身を調整をしてもらったか、そのままでパスしたか、記憶が曖昧です。売るときにレポートを渡してしまったので確認できず。写真なりコピーを取っておくべきでした。

定期的なタイヤ圧チェック

月に一回を目安にタイヤに空気を入れていました。私はいつもBPというガソリンスタンドに設置されているマシンを使っていましたが、ほとんどの場所で先端のレバーの部品が壊れていてストレスでした。エコの国の住人らしくモノを大切に使ってほしいものです。

ニュージーランドでは、psiという単位でタイヤの空気圧を表すのが一般的です。日本車に貼ってあるタイヤ空気圧のシールにはあまり記載がない単位なので、変換の間違いが無いようにお気を付けください。

売り方

買ったときと同じTrademeというオークションサイトに出品して個人間で取引しました。

またまたガイド仕事のツテで「帰国までこの車乗っていいから売れるうちに売りな」というありがたすぎるご支援をいただいていたので、時間には余裕を持って準備を進められました。結局、出品してから売れるまで二ヶ月かかったので本当に助かりました。

苦戦を強いられたのはMT車のマーケットが小さすぎるからだと思うので、同じくらいのコンディションでふつうの日本のオートマ車であればそんなに時間はかからないと思います。

洗車

個人間で高く売るには何よりも見た目が大事なポイントなので、手順1は掲載用の良い写真をとるための洗車です。

外側は特に特別なことはせず、2~3か月ごとにやっていたいつも通りの洗車で済ませました。ワックスをかけてぴかぴかにできればなおよかったかもしれませんが、そこまではやる気が出なかったです。


内側はカーペットクリーナーで気合を入れて掃除しました。Red squirrelによるとクリーナー指定の洗剤はもう手に入らないらしく、彼のアドバイスに従ってお酢で代用することにしました。掃除してから数日はお酢の匂いを飛ばすのに窓を開け放っておく必要があるので、晴れが続く日を見極めるのが大事です。

写真左がお湯とお酢を混ぜた未使用水のタンクで、右が吹いて吸って戻ってきた水のタンクです。汚くてすいません。何回往復しても右のタンクの濁りが全然薄くならなくて、全部のシートとマットを完了するのに半日は要したと思います。


以下が出品するときに実際に掲載していた内装写真です。さすがに積年のシミや色褪せは手強く残っていますが、ためらいなく人を乗せられるくらいにはきれいになったかなと満足いく仕上がりになりました。





掲載

Trademeで出品するにはサイトの案内に従って情報を入力するだけなので難しいことありませんが、一番安いプランでも掲載料が$58かかりました。Descriptionの自由記入欄はこんな感じで書きました:

  • Basic specs: 5MT, 4WD, timing chain, petrol (91), Japanese import
  • Current status: 176,xxx km, WoF until 13Jul25, Rego until 19Dec24
  • Service done last one year: new clutch, rebuilt gearbox, new battery, new front tyres, wheel alignment, front/rear brake pads, full oil change etc.

Selling my car to move abroad. Tidy interior and exterior, all the functionalities are well-maintained and work fine, good mirage (~16km/L). Great one for someone who wants to enjoy/learn MT driving! I am located in XXX, Auckland.

希望価格は$5,000からスタートして、一ヶ月売れなかったので$4,500 → さらに2週間売れなかったので$4,000 → さらに2週間売れなかったので$3,500、というふうに下げていきました。値引き交渉ありきなカルチャーなので、$500~$1,000程度は下がるだろうと見込んで提示額を決めるとよいと思います。

日本人の目につきやすいようにNZdaisukiにも記事を投稿しました。

試乗

Trademeから5人くらいとNZdaisukiから2人メッセージがあり、その中で実際に試乗に来たのはNZ人2人でした。最初の方は(私が翌日以降車を使わないといけない用事があり)引き渡しのタイミングが希望と合わずダメでしたが、二人目の男の子にはその場で即決して乗って帰ってもらえました。

やることは買ったときの反対の立場になるだけなので特筆することはありませんが、試乗の際はそのまま乗って逃げられないように必ず同乗するようにしてください。

手続き

試乗を終えて「買うわ」となった後は、名義変更と送金をします。

名義変更は、売り手も買い手もNZの免許証を持っていればNZTAのサイト1で即時完了できるのでラクチンです。この手続きをしないまま買い手が違反や事故を起こしてしまうと、車体情報から照合されて元の持ち主にペナルティが課されることになるので必ず引き渡し前に済ませましょう。

金額は最終的に$2,500で決まりました。値引き交渉はあらかじめチャットで合意していたので現場で口頭での駆け引きはありませんでした。当初の希望額の半分になってしまって残念ではありますが、帰国が迫っていたので高望みせずに売ってしまうべきだろうと判断しました。

これらが完了したら鍵を渡していよいよお別れです。悲喜こもごもを共にしたマイカーを手放すさびしさと、帰国前の一番大きな片付けが済んでほっとした気持ちが入り混じって感傷的な夜を過ごしました。

おまけ:後日、そういえば車の保険は一年契約だったなと思い出して途中解約の手続きをしたら$54返金してもらえて嬉しかったです。

運転の感想

ニュージーランドで一年間運転してみた総括は、難易度は低くて日本より運転しやすいと感じることも多かった印象です。ラウンドアバウトのおかげで信号が少なくて、道は広いところが多いし、スピード制限がシンプルでわかりやすいのが快適に運転できる要因だと思います。

反対に難しかった・しんどかったことは、何よりもシティ周辺で平日の通勤・通学の時間帯の渋滞が半端ないことです。発進・停止を繰り返すノロノロ運転は半クラを多用するのでめっちゃ疲れて嫌でした。それからこれは完全に自分が悪いのですが、初見殺しのスピードカメラも厄介でした。平日は10kmオーバーで$80から、休日は5kmオーバーで$30からチケットを切られて、後日警察からお便りが届きます。私は3回で合計$140お支払いしました💸


これからNZで運転を計画されている日本人の皆さまにおかれましては、事前に公式情報23によく目を通していただくようお願いします。日本とほぼ同じルールとはいえ信号・標識・駐車など細かい違いはたくさんあります(私は慣れていない道の唐突な車線減少が一番怖かったです)。それから、これは万国共通だと思いますがイカれた運転をするドライバーも少なからずいるので要注意です。

公式のパンフレットにも「景色に気を取られて道路から目を離してはなりません」とあるように、ニュージーランドではどこを運転していても目を奪われる絶景の連続です。NZを訪れる方にはぜひ国際免許を持参して、レンタカーで気ままに運転しながらニュージーランドの大自然をのんびり楽しむ旅をオススメしたいです。しっかり情報収集をして安心・安全なドライブをお楽しみください:)